ノラニンジンの不思議

  • 2012.07.28 Saturday
  • 07:09
北国にしては最高に暑い日々が続きます。それでも夜は少し過ごしやすいので、うちわがあれば何ともないですが、風が抜けない建物だと大変でしょうね。短い夏なので、しっかりと味わいたいものです。

函館に行く列車の窓から、ビロードモウズイカとノラニンジンの花がやたら目立っていました。道内では、野良ゴボウや野良ホップなど、作物が野生化したものがいろいろとありますが、ノラニンジンはニンジンになる以前の野生種が、帰化植物として入ってきているようです。ですから、ちゃんとカタカナ和名を獲得した、由緒正しい野生生物ということになります。

ノラニンジン1

ニンジン(Daucus carota)はアフガニスタンが原産と言われ、東に伝わって中国経由で入ってきたものが、「金時」に代表される東洋系の品種です。これに対して西回りにヨーロッパで改良されたものが、現在私たちが食べている西洋系のニンジンです。
独特の風味から、好き嫌いが分かれる食べ物かもしれませんが、栄養価が高く、ただ食べるだけでなく、ジュースやジャムにも加工されています。

ノラニンジンは、ほとんど根が肥大することなく、薹(とう)が立って花を咲かせます。セリ科ですから、ホワイトレースフラワー状の清楚な真っ白な花ですが、よーーく見ると、中心に一つだけ、赤黒くやや肉質の花弁を持った花があります。

アップ2
中心の花の花弁は小さく、周辺に行くにつれて花弁が大きくなる。

以前これは何なの?と聞かれていろいろ調べてみましたが、様々な図鑑などを調べても何も記載がありません。ネットでは、赤い花が雌花で、白い花が雄花なんて書かれているものもありますが、正しくありません。でもなぜ一つだけなのか?何の意味があるのか?いまだに答が見つからないのです。
思いあまって、昔から利用している帰化植物メーリングリストに投稿してみたところ、意外と身近な方から、何でという答えにはならないけれど、イギリスではこの花のことを「アン王女のレース(Queen Ann's Lace)」と呼び、レース編みをしていたアン王女が、誤って指を針で刺してしまい、レースに血が付いてしまったので、こんな花になったと言われていることを教えていただいたのです。

アップ

植物の花には、人間の目で見てもさっぱり分からない形状が、特定の昆虫の目に感じる波長で見ると、くっきりと浮かび上がるようです。この花はそんな意味を持っているのでしょうか?ノラニンジンの花によく集まるのは、ど派手なカメムシたちですが、どんな風に見えているのでしょうね。

ノラニンジン2

それにしても、ノラニンジンとアン王女のレースでは、同じ名前でもずいぶんと雰囲気が違います。なにせノラニンジンと名付けたのは、ほかにもハキダメギクとか、ワルナスビなんて名前をつけた牧野先生ですから、センスを期待するのが無理でした・・・(^_^;)

朝の盤渓から

  • 2012.07.25 Wednesday
  • 06:53
だんだん夜明けが遅くなっていくので、今のうちに写真に撮しておきたいと、昨日はデジカメを持って朝早く出かけました。
ばんけいスキー場の駐車場から見える手稲山は、普段見慣れた山容とは、全く違うどっしりとした表情を持っているからです。

手稲遠景

手稲山の本来の名前は、「タンネ ウェンシリ」でした。長く続く歩きにくい尾根を表した言葉で、明治の初めの頃は直訳して「長悪山」と呼ばれていたのですが、いつしか麓の地名である手稲を、山の名前にしてしまったのです。本来手稲とは、「テイネ イ」低く湿ったところという意味であり、山の名前としては適当とも思われない意味になってしまったのです。

手稲アップ

しかし、盤渓の方角から見た手稲山は、平和方面への長い尾根をはっきり見せ、どっしりとした山体の存在感が実に落ち着いているのです。まさに、タンネ ウェンシリの名を表していると思います。

そんな写真を撮ってから、ふと足元を見るとノゲシとオニノゲシが入り交じって繁っていました。先日ノゲシとオニノゲシの違いを聞かれたのふと思い出し、この際はっきりしておこうかと、写真を撮った次第。一般の方にはどーでもいいことなんですが、あれこれ植物にこだわってくると、こんな違いが気になって仕方なくなるのです…(^_^;)

ノゲシ
ノゲシとオニノゲシは、パッと見ただけでは見分けにくい。 (以下盤渓で 2012.7.24)

ノゲシ(Sonchus oleraceus)は、元々はヨーロッパ原産といわれ、かなり古い時代に世界中に広まったとされる植物です。オレラケウス(食用蔬菜の)という学名の通り、若菜は野菜として食べられていました。これに対して、オニノゲシ(S.asper)の方は(アスペルとは、ざらざらしたという意味)、明治時代になってから侵入したと考えられ、トゲトゲしくて厄介な雑草です。今ではどちらも身近なところに混じって生え、雑種であるアイノコノゲシというのまであるそうです。

見た目はあまり違わないのですが、触ってみると大違い。オニノゲシの方がはるかに棘が多く、しかも固くて痛いのです。オニノゲシの葉はツヤツヤとして固く、とても口に入れる気がしませんが、ノゲシの方はやや白っぽくて柔らかく、野菜になりそうです。

葉の比較
(左)オニノゲシ、(右)ノゲシ

確実に区別するには葉の基部を確認すると一目瞭然。ノゲシの方はまっすぐに伸びて、茎を優しく抱きかかえているのに対し、オニノゲシの方は、トゲトゲの葉を耳たぶのように丸くして、茎の両側からがっしりと挟み込んでいます。

付け根の比較
(左)オニノゲシ、(右)ノゲシ

付け根の横顔
(左)オニノゲシ、(右)ノゲシ

これだけ分かりやすく比較した写真はないだろうと、一人納得して帰途につきました。そうしたら、真新しい熊看板に出くわしてしまったのです。
私を食べる物好きなクマさんはいないって、コメントも付きましたが…(^。^;; クマの方が巧みに回避してくれるので、よほどのことがなければ鉢合わせすることはありません。怖さ半分、会いたさ半分ですけどね。

ヒメジョオンとハルジオン

  • 2012.07.14 Saturday
  • 07:39
道端でヒメジョオン(Erigeron annuus)が満開です。北米原産の帰化植物で、明治維新直前に観葉植物として導入されたとの記載もありますが、一体誰がこれを観葉植物と思ったのでしょう?

ヒメジョオン
わさわさと花を咲かせるヒメジョオン (円山で 2012.7.13)

ヒメジョオンは二年草で、ロゼット葉のまま冬を越し、花が咲く頃にはロゼット葉が枯れてなくなっています。分岐してたくさんの花を着け、大量の種子を散布するので、市街地だけでなく農村部や山地など、どこにでも侵入してしまう厄介な外来植物と言えるでしょう。いつも行っている松前沖の無人島である渡島大島でも、中腹の草原にいくつもの大群落を発見して、いささかげんなりしたことがあります。

花のアップ
ヒメジョオンの花 (星置緑地で 2012.7.10) 

これによく似た植物にハルジオン(E.philadelphicus)がありますが、これはかなり遅れて大正年間に渡来しています。こちらの方が早く開花し、宿根性のため開花時にも根生葉が残り、花茎の分岐も少ない代わりに、少し色がついたやや大きな花を咲かせるので、園芸植物として花壇に植えられていることもあります。

ハルジオン植栽例
花壇に植えられているどうみてもハルジオン? (大通公園で 2006.6.22)

両者はよく似ていることから、名前も混同しがちで、ヒメジオンやハルジョオンなどの名前もあるくらいです。ヒメジョオンは、中国産の野草である女菀(じょおん)に似て小さなことから付けられた名前のようですが、諸説があるようです。これに対してハルジオンは、牧野富太郎が命名しており、春紫菀の意です。

両者を見分けるには、草姿でもある程度分かりますが、花の咲き方を見れば違いがよく分かります。ハルジオンの花茎は全体がうなだれており、開花するにつれてその花がまっすぐになっていきます。

ハルジオン
花茎全体がうなだれ、開花につれて上がって行く (2008.5.29)

これに対してヒメジョオンは、一つ一つのつぼみはうなだれていますが、花茎は上を向いています。
花茎を切断すればもっとはっきりと区別でき、ハルジオンでは中空なのにたいして、ヒメジョオンには空洞がありません。

エリゲロン(ムカシヨモギ)属(Erigeron sp.)は主として北米大陸に自生し、約250種もあるようです。わが国にはアズマギクなど数種があるに過ぎませんが、花をよく見ればよく似ていることに気付きます。

ミヤマアズマギク
道内の高山にはミヤマアズマギク(E.thunbergii subsp. glabratus)がある
(滝野公園カントリーガーデン 2002.5.13)

最近人気の園芸植物にもエリゲロンの仲間があります。「源平小菊」という名前で売られている、エリゲロン・カルウィ(ビ)ンスキアヌス(E.karvinskianus )が、花壇やプランター、ハンギングバスケットなどでよく使われています。

エリゲロン
どこで撮したのか記憶がないなぁ… (2002.8.31)

ハコネウツギ(源平空木)と同じく、開花してしばらくすると、白い花が赤く色づいてくるのでこの名があるのでしょう。帰化植物として1949年に京都大学構内で確認され、ペラペラヨメナという立派な和名がつけられています。しかし、商品として売る場合、ペラペラヨメナでは安っぽいと思ったのでしょうね…(笑)
メキシコからベネズエラが原産地ですが、耐寒性もある丈夫な宿根草です。我が家にも昔から植えていますが、決して目立つことなく、いつもひっそりと咲いています。

帰化種エノテラ類あれこれ

  • 2012.07.07 Saturday
  • 07:33
エノテラ(ツキミソウ)(Oenothera sp.)の仲間は、園芸種から帰化植物までたくさんの仲間が入ってきています。もともとはアメリカ大陸原産ですが、花がきれいなことから、早くから園芸種として導入されてきました。このうち2年草のタイプは花が夕方咲いて翌日にはしぼんでしまうので、園芸化はされず、帰化植物としてあちこちに定着しています。

盤渓への道すがら、メマツヨイグサ(Oenothera biennis)が咲き始めました。エノテラ・ビエニスというのは、二年草のエノテラという意味です。うすぼらけの草むらの中では、クリーム色の花はよく目立ちます。

メマツヨイ
咲き始めたメマツヨイグサ (2012.7.4)

ところが、梅俊図鑑(新北海道の花、北海道大学出版会、2007)によれば、これとは別に、アレチマツヨイグサ(O.parviflora)(パルウィフロラとは小型の花という意味)も紛れ込んでいることになっています。花弁がハート型で、花弁の間にすき間があり、果実が濃緑色をしているのがアレチマツヨイグサとされており、よく見ていくと、結構このような個体も見つかるのです。

アレチマツヨイ
これがアレチマツヨイグサ? (2010.8.20)

果実の色はともかくも、花弁の形には確かに違いがある個体があります。

比較
花の形状の比較 (2010.8.20)

この仲間の分類は極めて難しいようで、深入りは避けることにしますが、いろいろとあるものです。

札幌近辺ではこの二種しかないのですが、道南に行くと花の大きさが4倍以上もあるオオマツヨイグサがたくさんあります。朝早く起きると、うっとりするほど美しい大きな花が、ぽっかりと咲いていて見事です。

オオマツヨイ
松前町江良漁港で (2008.6.24)

これがなぜ道内全域に広がらないのか不思議ですが、部分的にはあるものの、依然として渡島半島に集中しています。

分布
「北海道帰化植物便覧 2000年版」(五十嵐博著、北海道野生生物研究所 より)

高速道路で南に向かうと、室蘭のトンネルを抜けて伊達に入ると、道路の法面にいきなりオオマツヨイグサの大きな花が目に飛び込んできます。これで見ると札幌近辺でも確認されているようですが、私はまだ見たことがありません。古い写真ですが、約30年前、支笏湖畔丸駒で見たのが一番近くでしょうか。

支笏湖
支笏湖畔丸駒温泉脇で (1980.8.16)

帰化種エノテラ類には、まだこのほかにもあるのですが、あまり目に付くものではないようです。園芸種についてもまたご紹介しましょう。

タンポポモドキの季節

  • 2012.06.13 Wednesday
  • 07:08
タンポポの花盛りが終わり、場所によっては芝生がデージーで真っ白になっているところもありますが、再び真っ黄色の花に埋め尽くされているところがたくさんあります。タンポポよりも小さな花で、花茎がより高く、いくつもの花が分岐して咲いているのがタンポポモドキ(ブタナ)(Hypochaeris radicata)です。

タンポポモドキ
鮮やかなクリームイエローがよく目立つタンポポモドキ

元々はヨーロッパ原産の植物で、ハーブとして利用されることもあるようですが、わが国には牧草に紛れ込んで、昭和初期に札幌に入ってきたようです。それに対して北大の舘脇操先生が「タンポポモドキ」と名付けたのが1933年ですが、翌年京大の北村四郎教授が六甲山で採取したものに「ブタナ」と名付けたのです。ですから当然タンポポモドキに優先権があるのですが、地方の情報はなかなか伝わらないのか、ブタナの方が知られてしまったのです。(`ヘ´)

芝生を短く刈りすぎて衰退したようなところが、タンポポモドキの大好きな空間で、しっかりと地面に貼り付いたロゼット葉は、セイヨウタンポポの比ではなくしぶとい雑草になります。

これによく似て、花がもっと小さく、たくさん枝打ちした咲いてくる、キバナコウリンタンポポ(Hieracium caespitosum)も増えてきています。これも、1957年に倶知安で発見されたものが、わが国での初記録です。

キバナコウリンタンポポ
町中でも目に付くようになったキバナコウリンタンポポ

タンポポモドキよりも花が小さく、鮮やかなオレンジ色をした花も増えてきました。コウリンタンポポ(紅輪蒲公英、Hieracium aurantiacum)はヨーロッパ原産ですが、道内には戦後カラフトからの引き揚げ者が持ち込んだものと言われ、確かに稚内の町にはたくさん生えています。ロスケタンポポ、ロスケバナなどの俗称もこういったところから生まれたようです。
明治の中頃に観賞用に導入され、花が美しいことから、エフデギクやエフデタンポポなどの別名もありますが、セイヨウタンポポやタンポポモドキと同じく、これも北海道発の帰化植物のようです。

コウリンタンポポ
濃いオレンジの花がきれいなコウリンタンポポ

滝野公園のカントリーガーデンでは、芝生にするまでもない部分にコウリンタンポポやルドベッキア、セイヨウノコギリソウなどを導入しました。今では6月下旬にこのような景観が出現するようになりました。ここまで広がると怖いような気もしますが、この植物のたくましさを感じさせられます。

滝野公園
(滝野公園カントリーガーデンの花のまきば、2011.7.3)

ヒエラキウムの仲間は、世界には800種もある大きな仲間ですが、わが国ではヤナギタンポポとミヤマコウゾリナの二種のみがあります。園芸植物もたくさんあるので、庭園からの逸出もこれからは十分に考えられるでしょう。

ヤナギタンポポ
帰化植物とよく間違えられる自生種のヤナギタンポポ(滝野公園)

学生時代に、圃場の隅の方に植えられていて、何だろうなと思っていたのが、ヒエラキウム・ピロセルラ(Hieracium pilosella)です。地面をびっしりと被う性質から、グラウンドカバープランツに好適な素材だと思っていました。植物園のバラ園にある宿根ボーダーに植えられているのを見つけ、「帰化植物メーリングリスト」で調べてもらったところ、ようやく名前が分かった次第です。この時に分かったのですが、これが全国的に広まってきているようです。以前北檜山町で講習会をやった時に、会館の前の芝生にびっしりと生えていたことがありました。

ハイコウリンタンポポ
最近ハイコウリンタンポポの名前が付けられたらしい

現在では、学名がピロセルラ・オフィキナルム(Pilosella officinarum)となっており、ヒエラキウム属から分けられているようです。

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