冬囲い

  • 2012.11.15 Thursday
  • 07:09
この時期になると、どうしても町中の冬囲いに目が行ってしまいます。
というのは、私は20代から30代の8年間、造園会社というより、植木屋に勤めていました。親方は(社長などと呼ぶ人はいなかったなぁ…)岸村茂雄という、大酒飲みで無茶苦茶な生き方をしている人でしたが、とても細やかで柔らかいセンスを持った方でした。会社はとても小さいのですが、理想は高く持ち続けていて、技術的にどこの会社にも負けないという自負を持っていたのです。
冬囲いは、実用よりも美しさを追求するため、ここまでやるの?というほど手間をかけてやっていたのです。

公務員になり損ね、自分の鼻っ柱をへし折られたというよりも、もう一度しっかりと基礎から学びたいと入った会社が、この小さな会社だったのです。(まわりの誰からも、ここだけは止めておけと、かなりきつくいわれましたが…)
そんな会社でしたが、最初の年には図面描きはもちろん、ハサミさえ持たせてもらえず、ひたすらスコップを握って穴掘りばかり…夏までにはあっという間に10キロ以上体重が増え、ズボンもシャツもみんな裂けていったほどでした。でもこの時にひたすら穴掘りをやらされたおかげで(樹木の移植だけでなく、塀の基礎掘りなどもずいぶんとやりました)、様々な樹木の根を確認できたことは、その後大変役立ちました。もちろん穴掘りは、誰にも負けません(^_^)v

冬になるとさっそく冬囲いです。札幌グランドホテルや海陽亭などの料亭、STVなど、大変なところから先に回るのです。よく目立つ雪吊りは、命がけの仕事でもありました。STVのまわりでは、初めのうちは巨大なヨーロッパクロマツや歩道際のクロマツまでやっていたので、まさに命がけ。10m以上の木のてっぺんに立ち、何十本ものなわを下げた丸太を突き込まなければならないのです。丸太を固定した後、さらにてっぺんに上がって、なわをそれぞれの方向に振り分けて落とさなければなりません。もちろん新人がその役目ですから、私が登らされるわけです。
雪吊り1
(この時はまん中のイチイだけですが、その少し前までは左のクロマツや、ビル正面にある15m近くのヨーロッパクロマツまで雪吊りをしていたのです 1982.12)

今なら足がすくむところでしょうが、若さですねぇ。まだ20代ですから、全然平気で、まわりの見物人を見回す余裕さえあったのです。でも一歩間違えれば大けが…という危険と隣り合わせですから、冷や汗をかいたこともしばしばですが、できあがって見上げたときに、どうだ!オレがやったんだぞっとスカッとしたものです。
宮の森のN邸の雪吊りは、もっと大変でした。東京の岩城造園が作庭し、親方も若いときにいた関係で、冬囲いだけはうちがやることになっていましたが、最高レベルのクロマツなもので、とても気を使った記憶があります。なわの本数がとても多いので、ものすごく大変でした。
雪吊り2
(なわの本数が普通の倍くらいあったクロマツの雪吊り 1980.12.18)

グランドホテルの冬囲いは、一番時間をかけていました。実用というより、半分修景要素としての囲いをするのです。わらを編んだ蓑を巻き付けて作る「七五三」は、わら編みからやらなければならず、特に頭に付ける巨大なわらぼっち編みは、地下のボイラー室で黙々と何時間もかけて編まされたものです。(多分今でも編めると思いますが…)
七五三
(グランドホテルの前の七五三 1981.12)

七五三というのは、七段、五段、三段を組み合わせるから、こんな呼び方をしていました。グランドホテルには、四階のレストラン前に、札幌で一番古い屋上庭園がありますが、ここにも飾りの七五三を立てていました。ここには何も植えられておらず、あくまで修景のために付けていたのです。
七五三
(グランドホテルの屋上庭園に設置した七五三 1980.12)

この横のニオイヒバの生垣にも、骨を晒竹で組み、シュロ縄で編んだ蓑を取り付ける「蓑囲い」を作っていました。雪が舞う中、濡らしたシュロ縄を使うときには当然素手でなければならず、凍り付いたシュロ縄を感覚のなくなった指で縛っていくのですから、今から思えばよくやったものだと思います。
蓑囲い
(この冬囲いが一番いやだったなぁ… 1980.12)

もちろん今の経済状態では、こんな無駄ともいえる冬囲いなんかやるわけありません。なんだかパッとしない冬囲いばかりになってしまいましたが、こんな技も兼六園ならいざ知らず、北国では人知れず滅んでいくのでしょうね。やっている時にはものすごく大変で、とてもつらい仕事でしたが、ちょっと懐かしくなりました。
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