ラベンダー物語

  • 2015.01.22 Thursday
  • 05:50
もう本を置くところがなくなってきているので、本屋にはできるだけ近づかないようにしています。先日の旅行前に、札駅の近くでちょっと時間が余ったので、紀伊國屋に入って立ち読みでもしようと思ったところ、どうしても買わなければならない本を見つけました。松山との行き帰り、飛行機に4回も乗らなければならないので、その時に読むにはちょうどいいか…と思って買ってしまいました。

  ラベンダー物語
  (「富良野ラベンダー物語」 岡崎英生著、遊人工房刊、2013)

千歳を飛び立つや早速読み始め、これはすごい本だということが分かりました。もちろん主役は富田忠雄さんですが、なぜ富良野にラベンダーが導入されたのか、そのラベンダーのタネはどこからもたらされたのか、本場フランスでのラベンダー作りの歴史に至るまで、実に丁寧に取材して裏付けられているのです。私も工芸作物学を習った高橋万右衛門先生や、フランスの植物療法家のモーリス・メッセゲまで出てくるので、本当に息も継がずに読み進んでしまい、結構厚い本でしたが、松山に着く頃にはほとんど読んでしまったほどです。

私が関わった、ファーム冨田を現在の姿にする拡張工事については、最後のところでようやく出てきます。富田さんの祖父が切り拓いた水田をつぶし、ラベンダー畑を大きく広げて花の農場を作ろうとしたところです。それをまず頼んだ先は、実は辻井先生でした。
辻井連絡
押し入れにしまっているファーム富田関連の資料を開けてみたら、その時のFAXが出てきました。なんで辻井先生のところに話が行ったのかと聞いてみたら、ファーム富田の商品のロゴやラッピングなどをずっとやっている方が、辻井先生が学生時代にいた下宿の娘さんとのこと。先生は、舞い込んできた仕事を、植物調査なら○○へ、まちづくりなら○○へ、そして花関係なら笠へと、舞い込んでくる話をそれぞれの得意分野ごとに振り分けて話が飛んでくるのでした。

手帳を調べて見ると、先生との打合せの後、ゴールデンウィークの5月3日から4日にかけて、まだ小さな子供たちも連れて、富田さんのところに行ってます。まだ雪融け直後で、外にはなにもない時期でしたが、適当に子供たちを遊ばせておいて敷地を見て歩き、話をじっくり聞いて、どこに問題があるのか、何をしたいのかを掴むことができました。じゃあそのうちプランを考えておきましょうと切り出したところ、富良野にホテルを取るから、明日までに図面を描いてもらえないだろうか?と言われて目を白黒。まだ初対面だったので、こんな展開になるとは想定外でした…(^。^;;
現況写真

図面と航空写真を預かり、ホテルの狭い部屋で子供たちがわいわい騒ぐ中、えいやっと渾身の力を込めて描いたのがこんな図面でした。(これは原本ではなく、後で清書したものですが…)
プランニング
それまでは、道路の上にあるトラディショナルラベンダー畑のみで、たくさんやってくる観光客は駐車できないので、どんどん先に進んでいき、畑の向こうに何十軒もコバンザメのように小さな店ができていて、富田さんの店の売上げはわずかなものだったのです。そこで祖父が6mも切り下げて作った水田を、富良野川改修工事の残土捨て場にしてもらって埋め立ててしまい、そこに新たなラベンダー畑と売店を建てたいとのことだったのです。

その後もいろいろとありましたが、一晩で描き上げたプラン通りに整備が進み、コバンザメの店は完全に姿を消して、今のような賑わいの空間が生まれました。富田さんが最後まで植えるのに抵抗したポプラ並木も、天皇陛下が訪問された際に、とてもいい並木だと満足されてから、何も言わなくなりました。この右手には、パチンコ屋やコンクリートプラントなどが見えてしまうので、左手の十勝岳連邦の素晴らしさが半減しないよう、この並木には絶対のこだわりがあったのです。
ポプラ並木
ちょっぴり残念だったのは、このラベンダー畑には中央にかなり尾根筋を付けて盛土をしたはずなのに、盛土が沈下してほとんど真っ平らになったことでした。

冨田さんは、誇りを持って「百姓」に徹してきた方です。植物を大切にしっかりと育てることに執着し、軸が全くぶれない強さがあります。単なる観光農園ではなく、あらゆる土産物もすべて本物のよさを追求してきたので、周りにたくさん派生してきたコバンザメが売っている安物の土産が我慢ならなかったのでしょう。入園料を取らないで花人(はなびと)たちに自由に見ていただくことにも、絶対のこだわりを持っていました。
富田さん

ここに関わった時は、私もまだ30代。まぁいろんな無茶もやりましたが、とてもいい経験をした現場でもありました。この物語の中では、ほんの数行分にしかなりませんが、お手伝いできたことを誇りに思っています。
コメント
「富良野ラベンダー物語」の著者、岡崎英生です。先日11日、富良野で富井多産の長女・典枝さんにお会いした折、笠さんのブログのことと、そこにお書きになっている内容を知らされ、驚愕いたしました。そこで帰宅してすぐ、パソコンを開いてアクセスしてみたところ、小生の著書をくわしく、しかも写真付きで紹介してくださっており、感激した次第です。また、祖父が切り拓いた水田をラベンダーとハーブの畑に変えるという、富田さんのあの大決断のかげに、今回はいどくしたようなエピソードがあったのだということにも、心底、驚いております。富田さんには長年にわたって取材しましたが、なぜかこのエピソードのことはお話しくださいませんでした。お聞きしていたら、あの部分の記述をより豊かなもにできていたのに、と悔やまれてなりません。もし「富良野ラベンダー物語」が再版されるような機会がありましたら、あらためてご了解を得、取材させていただいた上で、記述を補強させていただきたいと思っております。本日は以上取り急ぎご挨拶まで。拙著に賜りました数々のお言葉、まことに有難く、重ねて感謝申し上げます。
  • 岡崎英生
  • 2015/07/15 6:15 PM
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