ビロードモウズイカ

  • 2016.07.05 Tuesday
  • 05:36
週二のペースでリハビリに通う道すがら、建物とのすき間にビロードモウズイカが咲いていました。それだけならどってことはない風景なのですが、おやっと気になったことが。
街角

背丈ほどにも伸びることのある棍棒状花序の、いろんなところから花が咲いているのです。今まで何となく見ていたのですが、考えてみればどっちかにせいよ!と言いたくなる花の咲き方です。無限花序では下から順に咲き進むのに対し、有限花序では花は先端から咲き始め、下に向かって咲き進むのが一般的です。ところがこれはランダムに咲くみたいですねぇ。
花の咲き方

病院の前には、数ヶ月前に一角が一気に更地になったマンション予定地が広がり、そこには定番の帰化植物が早くも群生しています。そこにもビロードモウズイカはたくさん生えているのですが(赤丸)、その中に既に花茎を伸ばしている個体が混じっていました。あれ?お前は二年草の筈なのに、早くタネを落とさないとすぐに工事が始まりそうだと、急遽一年草になったものがあるようです(オレンジ)。はたして間に合うのでしょうか?
空き地

こんなへんてこな咲き方をするのかといろいろ調べてみましたが、どこにもそんなことは書いておりません。その代わり、この植物には実にいろんなことがあることが分かりました。ユーラシアから世界各地に侵入して大勢力になっているものの、他の植物が繁茂していると大きくなることができず、農耕地の害草にはならない代わりに、半砂漠地帯のような荒れ地にいったん侵入するとたちまち大繁殖して、生態系に大きな影響を与えるということです。そういえば昔ある採石場で見た風景。なんだか不気味な感じがしましたねぇ。高山帯にまで侵入するということは、確かに大きな脅威になりそうです。
採石場
 (南区の採石場で  1990.7.18)

花が終わると大豆くらいの果実の中に700個ものタネができ、一つの花序では20万個ものタネができるのだそう。そんなに遠くまで拡散することはないけれど、いったん土の中に入り込むと数十年も休眠し、何かの拍子に掘り返されて発芽に適した環境になれば、一斉に発芽してくるのだそうです。最近このあたりのアパートなどの陰には、こんな風景がやたら目立ちますが、ほったらかしてしているので、たくさんのタネを落としていることでしょう。
近所のアパート

するとあのマンション予定地には、その昔まだ荒れ地や畑だった頃に既に繁茂してたくさんのタネを落とし、市街地になって数十年後にようやく日の目を見たタネから生えてきたものなのでしょうか?渡来は明治初期とあり、東北から北海道に特に多いとあるので、そんな可能性も十分にあるのかと考えてしまいました。

フランスギク

  • 2016.06.20 Monday
  • 05:50
今を盛りと咲いているフランスギク。道内ではマーガレットと呼ばれることが多いのですが、本物のマーガレットは非耐寒性のため一年草扱いされる半低木(関東以西では木化する)のため、あまり使わない方がいいでしょう。和名も木になることからモクシュンギクになります。
フランスギクは、かつてはキクと同じくクリサンテムム属(Chrysanthemum leucanthemum)になっていましたが、現在では種小名が格上げされてレウカンテムム・ウルガーレ(Leucanthemum vulgare)となっています。英名は、牛のつぶらな目に似ているので、オックス アイ デージー(ox-eye daisy)。タネで簡単に殖やすことができるため、ワイルドフラワーとして全道各地にばら播かれたために、至る所で野生化してしまいました。
フランスギク

毎朝通っている盤渓への道でも、5〜6年前にはクゲヌマランが数十本も生える法面だったのに、上の庭から下りて来たフランスギクが、またたくまに法面全体を覆い尽くしてしまいました。こんな調子で既存植生に脅威を与えるようになってきているのです。
法面

北海道では、国が管轄している「外来生物法」をよりきめ細かくカバーするために、「生物多様性保全条例」を制定し、それが昨日19日から施行されました。全国的に見ても画期的な条例となっています。その第一号の植物に指定されたのが、このフランスギクと、やはり今盛んに花を咲かせているイワミツバです。
指定外来種
(道新WEBから拝借しました。m(__)m)

じゃあ、庭やガーデンに咲いているものはどうすればいいの?となりますね。それがあるからといって罰金取られるわけではありませんが、将来的には好ましくないものとして、なくしていく方向に持っていくべきでしょう。外来生物法で特に危険なものとして「特定外来生物」に指定されている、オオハンゴンソウやオオキンケイギクだって、まだ至る所に生えているけれど、ガーデン内からはほぼ駆逐されてきました。これと同じく、私が関わっているあちこちのガーデンなどでも、時間はかかってもこれらの植物は減らしていこうと思っています。

フランスギクはわりと簡単に抜けるけれど、イワミツバは根が少し残っているとすぐに再生してくるので、かなり手強い相手です。ガーデンによく植えられている斑入りイワミツバも同様に指定対象になっています。
フイリイワミツバ

外国産の植物は、古来より園芸植物や有用植物としてわが国にもたらされてきましたが、近年では個人でも簡単にタネが輸入できるようになっているため、飛躍的にその数が増えてきています。中にはとても危険なものが混じっていることがあるので、このまま無制限な流入が続くのは問題が多いのですが、規制や禁止まではとてもできないでしょう。難しい問題です。

指定外来種

  • 2016.03.20 Sunday
  • 05:53
昨日は「指定外来種」の説明会があったので、ヒマがあれば行ってみようかなと思っていましたが、案の定全くヒマもなく・・・話は動物主体だったので、まぁいいかなという感じです。

説明会

10年前に国の法律として「外来生物法」ができ、その中で極めて危険な外来種を『特定外来生物』に指定することにより、固有の自然環境をこれ以上劣化させない方向性が示されました。植物は今のところ13種が指定され、道内でなじみ深いものはオオハンゴンソウとオオキンケイギク程度です。その次のステップとして、このたび北海道では独自に「北海道生物の多様性の保全等に関する条例」に基づいて「指定外来種」を指定しました。トノサマガエルやアメリカザリガニなどと共に、植物が2種指定されたのです。
その一つがフランスギク(Leucanthemum vulgare)。道内では誰もがマーガレットと呼びますが、正しい英名はox-eye daisyです。牛のつぶらな目に似ているということでしょう。道内至るところに分布し、最近では高山帯にまで上がり始めている点が危険視されています。
フランスギク

一時流行ったワイルドフラワーの主要構成種になっていたため、至るところにタネが播かれたことも拡散の原因になりました。危険性からは、特定外来生物のオオキンケイギクなんかより、はるかに危ないと感じます。
雑草化

もう一種はイワミツバ(Aegopodium podagraria)。舌をかみそうなアエゴポジウムとは、葉の形がヤギの足に似ていることから、ポダグラリアとは「足の痛風に効く」という意味で、事実薬草として各地に広められていったようです。
イワミツバ

こちらはまだ札幌近辺が主要生育地ですが、極めて繁殖力が強いので、いずれ全道に拡散していくのでしょう。セリ科なのでたくさんの種子を生産することもありますが、これが危険な最大の理由は、地下茎を伸ばして旺盛に栄養繁殖を行う点にあります。湿った場所を好むので、そっと抜いていくとたやすく抜けてくれ、まるでセリを抜いているようないい香りがします。実際に野菜として食べられていたようですから。
抜いた状態

ところが根のところをよく見ると、無数にランナーを伸ばしているのが分かります。これがいとも簡単にちぎれてしまい、そこからまた株が再生してしまうので、根絶することが難しいのです。もう一つ懸念しているのは、これが増え始めると純群落となり、他の植物がなくなってしまうのです。多分根から化学物質を出して、他の植物の生育を阻害するアレロパシーを引き起こしているのではないかと感じています。除草剤のラウンドアップをかければ簡単に枯らすことが出来るけれど、これを嫌がる人が多いですからねぇ…( ̄。 ̄;)
ランナー

斑入りのイワミツバもよく見かけます。こちらはなぜかアエゴポジウムという名前で売られていることが多いのですが、性質は全く同じなのでやはり危険な植物です。
フイリイワミツバ

道条例による指定なので、国の法律ほど厳しい罰則はありませんが、栽培はあくまでしっかりとした管理下で行い、むやみに野外に捨てることなどが規制されます。私たちが栽培するたくさんの植物の中には、このような危険性を持っているものが、この他にもた〜くさんあることを自覚しなければならない時代になってきました。

北海道外来植物便覧

  • 2016.02.26 Friday
  • 06:03
注文していた「北海道外来生物便覧 2015年版」が送られてきました。著者は千歳在住の五十嵐博さんで、一緒の時期はなかったものの、同じ植木屋の大先輩に当たります。はじめに の冒頭に書かれているように、「本書は図鑑ではない。北海道に記録されていた帰化植物(外来植物)を調べるための本である。」 なので、帰化植物に興味の無い方にとっては、とっても退屈な本かもしれません。私は学生の時から、自然地域よりも都市近郊の帰化植物だらけの場所の方が好きだったので、園芸植物との境界があんまりない帰化植物はずっと守備範囲だと思ってきました。なのでこの本は「待ちに待った改訂版」ということになるのです。
外来生物便覧
今回は北海道大学出版会からの刊行になったので、ある程度の販路も広がることが期待できそうです。それにしても、前田一歩園財団の助成があったから出版できました とあるように、こういう特殊な本の場合、普通のルートでの刊行はとても大変なことと思います。この元になった「北海道帰化植物便覧 2000年版」が出たのが15年前。これは自費出版として刊行したので、はたしてどれだけ出回ったのでしょうか。
帰化植物便覧
新刊の中身は、基本的には旧刊を踏襲しているといえますが、サイズがA4判からB5判に小さくなって扱いやすくなったこと、道内分布図が飛躍的に多くなったこと、なんと分類体系がいよいよAPG靴飽楾圓靴燭海、などが大きな特徴といえるでしょう。帰化植物が外来植物に変わっているのも、時代の流れを感じさせます。この分布図は、全道(もちろん北方領土を除く)を二万五千分の一の地形図によるメッシュに区切り、そこで自ら確認したものを落としているのです。なので、道内での分布情報が大変よく分かるのです。たとえば、オオアワダチソウと混同されやすいセイタカアワダチソウは、石狩低地帯に集中し、道南や道東、道北にはあまり分布していないことが一目で分かります。
セイタカ

それに対してオオアワダチソウは、オホーツク北部から宗谷にかけてがやや薄いものの、ほぼ全道に広がっています。札幌近郊でも、セイタカの方が数も圧倒的に少ないのですが、この図からは密度感覚がなかなか見えにくいのは仕方ないことでしょう。
オオアワダチソウ

その下にある682.トキワアワダチソウ には、珍しく私の名前が書かれておりますが、これは全道で唯一私がこの場所で確認し、五十嵐さんに連絡したことによるのでしょう。これの扱いについては今も扱いを検討中なので、そのうち報告できる日が来るかもしれません。
トキワアワダチソウ
 (松前町二越(ふたごえ)の海岸に生えていたトキワアワダチソウ  2009.9.13)

「今後もガーデニングブームで世界各地から新しい植物が導入され、これらが各地に逃げ出すのであろう。」と書かれているように、園芸の世界に身をおいている者にとっても、外来生物問題は避けて通れない課題であることは間違いありません。私たちにとって、決して無関心ではいられないのです。

(『北海道外来生物便覧 -2015年版-』 五十嵐 博著、北海道大学出版会 発行、2016)
(送料とも5.534円のところ、4.497円で購入できますので、ご希望の方はコメント欄にどうぞ)

キクイモ

  • 2015.12.08 Tuesday
  • 05:56
先日ある情報誌を見ていて、おやっ?!と、びっくりしてしまいました。
通販

キクイモが、5kgでなんと5,000円もするのです。キクイモごときが、こんなに高価で取引されるんだと驚いてしまいました。キクイモ(Helianthus tuberosus)は、北アメリカ原産のヒマワリの親戚で、種小名のツベローススの通り地中に塊茎(tuber)を作ります。この写真は9月に掘ったものなのでまだ小さいですが、秋遅くになると小振りのジャガイモクラスに育ちます。
イモ

江戸時代末期に飼料用作物として伝来したそうですが、戦争中に栽培が奨励されたことから一気に広がり、現在のような全国的な帰化状態を作ったといわれます。デンプン質ではないので、腹は膨れるけれど栄養分としては・・・道内では至るところと言っていいくらい野生化しているけれど、キクイモの花は霜が降りる頃でないと咲かないので、意外と気付かれないのかもしれません。
キクイモ

このイモにはイヌリンが大量に含まれているので、このように健康食品として一部では人気があるといわれてましたが、それにしてもこんなに高価に取引されるものなんですねぇ… いくらでも掘って売りたいくらいです。

道南には、キクイモによく似て開花期が約一ヶ月早いイヌキクイモが分布しています。9月半ばに道南を走っていると道端であちこちに咲いているのを見かけます。こちらのイモはキクイモほど大きくならず、食用とはされないようですが。このイヌキクイモは、キクイモの種内変異なのか、変種なのか、はたまた別種なのか?いまだに結論が出ていないようです。
イヌキクイモ

「石狩産、農薬不使用」とうたっているけれど、あんなものに農薬かけるわけないし、石狩方面の道端で掘っているのかなぁ…(^^;)

ハナショウブ??(訂正版)

  • 2015.08.28 Friday
  • 06:00
新聞を読んでいると、時々なんだこれ?という記事にぶつかります。
先月の道内版には「食害なんの ハナショウブ」と、苫小牧で行われた「とまこまい花しょうぶフェスタ2015」の紹介記事で、シカの食害にもめげずに咲いているハナショウブが紹介されていました。
切り抜き

でもここに写っている花は、ハナショウブではなくキショウブ(Iris pseudacorus)のように見えてしまいました。この記事によると、2009年から造成が始まり、何と1万株ものハナショウブを植えたとのこと。ということは、これもちゃんと植えられたものということになります。キショウブは、侵略的外来種としてはかなり危険とされているもので、外来生物法による要注意外来生物に指定されています。「栽培にあたっては、逸出を起こさない。既に野生化している湖沼等があり、在来種との競合・駆逐等のおそれがある場所については、積極的な防除または分布拡大の抑制策の検討が望まれる。」とされているものです。
キショウブ

今どき、そんな危険なものをわざわざ公共工事で植えたりするものなのかなぁ?と考え込んでしまいました。黄色い花が咲くハナショウブもないわけではありません。1962年に愛知県の大杉隆一氏によって、伊勢系のハナショウブとキショウブを種間交雑して作出された、黄色系初の品種である‘愛知の輝’は、どこの花菖蒲園でもかならずと言っていいほど植えられています。でもこの品種は、花がクリームイエローで、葉も黄緑色をしているのですぐに見分けがつきます。
愛知の輝
 (‘愛知の輝’  芽室の花菖蒲園、2005.7.15)

‘愛知の輝’の出現以来、なんとか緑色の葉をもった黄花ハナショウブをとみなさんが努力し、‘堺の黄金’や‘みちのく黄金’なども作出されてきていますが、はたしてこれがそのような品種なのか、気になりました。
みちのく黄金
 (‘みちのく黄金’  芽室の花菖蒲園、2005.7.15)

その後関係者からの連絡で、植えられているのは黄花系の品種である‘堺の黄金’や‘金冠’であることが分かりました。「比較的大型で、花が一斉に咲きそろう特性があり、写真撮影で映える」ことから、新聞記者が撮影に至ったと推測されます。とのことですので、色彩的にもよく目立つ花を構図に入れたものでしょう。憶測記事を書いたことにより、関係者のみなさんがご不快の念をもたれたこと、深くお詫び申し上げます。

錦大沼公園は、苫小牧でも西の外れなので最近全く行っておりません。花の時期に確認してきたいと思っています。なおキショウブには、白花キショウブも稀に見つかることがあるそうです。これは植物園に植えられていたものですが、花の時期にはよく見ていただきたいと思います。
白花キショウブ

ハキダメギク

  • 2013.09.19 Thursday
  • 07:23
この時期になると、花壇に植えられた草花の中にはくたびれてくるものがあり、管理の悪いところでは、雑草が目立ってきます。そんな時期に、最近最も増えてきたと感じているのが「ハキダメギク」です。
ハキダメギク
(白石駅前のビルの植え込みに繁るハキダメギク  2013.9.18)

道内でもそんなに古い記録はなく、私が初めて気付いたのは、今から14,5年くらい前に、函館市の高松苗圃だったはずです。ところが最近では、札幌でも全然珍しくない植物になってきているようですが、生えているのは町中の花壇がほとんどで、荒れ地や道路際などの乾燥地などではあまり見られません。本によればチッソ分の多い肥沃なところを好む、とか書かれているように、帰化植物としては、ややひ弱な存在なのかもしれません。
この植物の拡散は、花苗のポットによって運ばれていったと推測しています。おそらく生産者の苗畑でまずはびこり、そこの土壌にタネが蓄積されます。ポット苗として出回る頃には、まだタネのままなので気付かれず、夏になるとさっそく発芽して繁茂し、タネをまき散らしているのでしょう。花壇は基本的に肥沃で絶好の環境だからです。
花のアップ
(大通公園の花壇に咲くハキダメギクの花  2013.9.17)

この花はよく見ると結構かわいいのです。白い5枚の花弁がすき間を空けて付いており、それぞれが3つに分かれているため、15枚の花弁があるように見えます。いかんせん花の大きさは米粒くらい、さっぱり目立ちませんが、こんな花でも「不屈の精神」という立派な花言葉があります。いかにも帰化植物らしい花言葉かもしれません。

ハキダメギクという名前は、牧野富太郎先生が名付けたもので、世田谷の経堂辺りの掃きだめに生えていたので、こんな名前を付けたようです。今のゴミステーションとは違いますからね… 人が変な名前を付けると、結構ぼろくそにケチを付ける割には、自分でも変な名前を付けています。その最たるものがハキダメギクであり、ワルナスビかもしれません。
ワルナスビ
(札幌で初めての記録だったワルナスビ(北海道神宮の梅園で)  2008.8.23)

成田の御料牧場で見つけたこの草を、調べるためか庭に植えたところ、たちまち地下茎で猛烈にはびこり、しかも針のような鋭い棘があるので駆除も大変だということで、こんな名前が付けられたようです。ううむ…
神宮の梅園で、まるで植えられているかのようなたくさん咲いているのを発見し、たまたま学会のシンポの関係でおつきあいのあった権禰宜(ごんねぎ)の方に、この植物の素性をお知らせしたので、早速駆除にかかられたようです。まだ少し残っていますが、かつてのような繁茂ぶりではなくなってきています。
梅林

外国から渡ってきた植物には、きれいだと庭でちやほやされるものもあれば、ひどい名前を付けられて疎んじられるものもたくさんあります。そんな中でこのハキダメギクは、名前はいささかかわいそうですが、結構したたかに一等地で生き抜いている植物かもしれません。

ビロードモウズイカ

  • 2013.07.11 Thursday
  • 07:06
事務所のすぐ向かいの駐車場では、ついひと月前にはミヤマオダマキが満開になっていたと思ったら、今ではビロードモウズイカ(Verbascum thapsus)の花茎がにょきにょきと。この花は、やっぱり異様な感じがします。
ビロードモウズイカ

ここは砂利敷きの駐車場なので、よほど居心地がいいと見え、とてもよく育つのです。軽く背丈を越えるほどの棍棒状の花茎を伸ばし、ぎゅうぎゅう詰めになった黄色い花が咲いています。ラムズイヤーが癒やし系ハーブとしてもてはやされるのに、なんでこの葉は気持ち悪がられるのか分かりませんが、手触りだけみれは全く同じですけれど。
花

この花茎は、ちょっとやそっとでは折れなくて、枯れて固くなったものなら、本当に棍棒として使えそうなくらい固いのです。バーバスカム(学名の読みはウェルバスクムですが、園芸的にはバーバスカム)は、ガーデニングの世界では結構人気者で、オープンガーデン巡りをすると、今時分はどこにも咲いているでしょう。大半は完全な二年草ですが、宿根性のものもあるようです。これをハンドルネームにした秋田のモウズイカさんは、この世界では超有名人で、バーバスカムの普及には大いに役立ったことでしょう。

帰化植物的に見ると、本種の分布は北日本の寒冷地中心で、道内では道南から道央に特に多く、道東道北にはまだ少ないようです。札幌近辺ではかなり厄介者になってきており、この近くのマンションの裏手など、あんまり手をかけないところでは、すぐにこんな状態になってしまいます。
近所

この植物を初めて強く意識したのは、今からもう33年も前になりますが、藤野の採石場に石を探しに行った時に、大群生を見てしまったのです。この年の春、当時藤野の国道脇にあった小さな植木屋に入り、現場に出始めた頃でした。この採石場では、藤ノ沢石の名で、ドライウォールに使うのにちょうどいい、平べったい石が取れていました。この時には、会社の仕事ではなく、私の大学の先生がドライウォールを積む石を探していて、一緒に石を見に行った時のことだったかと。
藤野採石場
(南区藤野の採石場に群生するビロードモウズイカ  1980.7.18)

あまりの見事な群生ぶりに、思わず撮したのがこの写真。当時からもうこんなに生えていたのですね。その後ドライウォールの石の積み方を伝授され、それ以来、私の得意技の一つになったということもあり、この時のビロードモウズイカは強く印象に残っています。

イヌノフグリ各種

  • 2013.06.17 Monday
  • 07:09
久しぶりの雨を受けて、木々の緑が滴るように潤って見えました。この雨は本当にありがたかったです。
新得町の狩勝園地では、草地の中に様々な植物が見られたのですが、やたら目立っていたのがコテングクワガタ(Veronica serpyllifolia)でした。在来のテングクワガタに似て、一回り小さいところからこの名が。
コテングクワガタ
もともとヨーロッパ原産の多年生草本で、原産地では青花だそうですが、道内に見られるのはほとんど白花に近いものです。道内には戦前に入ってきたといわれ、80年頃に初めて報告されています。やや湿った場所を好み、水田の畔のカバーに使われたこともあるとか。そのような環境ではよく広がってしまうようで、園地でも一面に花を咲かせていました。

これによく似て、草丈がとても低く、地面を這う多年生のVeronica(ウェロニカ)属に、(仮)ハイクワガタ(V.repens)があり、よく間違えられます。(全農教の帰化植物写真図鑑ですら、写真が間違えられていたほどです。)私も参加している帰化植物MLでも、数年前に議論になったのですが、この二種は全く異なっており、特に道内各地に広がっています。グラウンドカバープランツとして利用可能だし、鉢物としても売られていることがあります。
ベロニカ・レペンス
(北大の圃場には学生時代から生えていました。 2013.5.25)

このVeronica(ウェロニカ)属の植物には、たくさんの園芸植物がありますが、帰化植物としてもいろいろ入ってきています。春先に真っ青な花を咲かせるオオイヌノフグリ(V.persica)や、最近畑地雑草として増えてきているタチイヌノフグリ(V.arvensis)などがあります。もう一つ、不思議な存在のVeronicaに、アレチイヌノフグリ(V.opaca)があります。
アレチイヌノフグリ
(円山墓地に細々と生きているアレチイヌノフグリ  2005.6.1)

これは、植物研究家の原松次先生が、円山墓地で発見したものを東京に送って同定され、1987年に報告・命名された珍しいものです。その後ほとんど報告されていないことから、以前私の大先輩のWさんと円山墓地で捜索したことがありました。何度足を運んでも、なかなか見つけられなかったのですが、ある日曜の午後に携帯に電話があり、とうとう見つけたよ〜。早速行ってみると、確かにオオイヌノフグリとは異なり、花も一回り小さくて、茎にたくさん毛が生えていました。
比較
(左から、オオイヌノフグリ、アレチイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、コテングクワガタ)

しかし、なんでこの場所にだけ生えているのでしょうか?ふとその場所で顔を上げると、レーン先生ご夫妻の墓が。レーン先生は、戦前に北大予科の英語教師として来日され、戦争中はスパイ容疑で特高に痛めつけられて送還されたにもかかわらず、戦後も来日されて、長くご夫婦で教鞭を執られました。その御家族が墓参りの折に、故郷から花を持ってきて植えたものにくっついてきたのかな?なんて勝手に想像してしまいましたが、本当にその墓の周りにしか生育していないのです。帰化植物にも、こんなつつましい生活を送っているものがあるのです。
円山墓地

キクイモとイヌキクイモ

  • 2012.10.17 Wednesday
  • 07:05
札幌近辺ではまだ霜が降りていませんが、いつになったらやってくるのでしょう。
この間にキクイモが次々と開花してきています。キクイモの開花は、霜の降りる時期ギリギリのため、年によっては花を見ることなくしおれてしまいますが、今年は満開になりそうな気配です。
キクイモ
(この年も霜が遅く、富良野の山間部で満開になっていた。 富良野市麓郷 2006.10.12)

キクイモ(Helianthus tuberosus)は北アメリカ原産の帰化植物。ヘリアンツス属ですからヒマワリと同じ仲間で、花が咲けばなーんだということになるでしょう。
キクイモ拡大
(今年は開花が早く、9月末には花が咲いていた。 由仁町伏見で 2012.9.28)

種名のツベローサスとは、塊茎(tuber)を作るという意味の通り、地中にジャガイモともサトイモとも似ているイモを作ります。
塊茎
(これはやせている土地なので小さいが、肥沃なところではジャガイモくらいの塊茎になる 2012.10.13北大構内で)

わが国には既に江戸時代には渡来していたと言われ、各地に野生化していますが、特に北海道に多いのだそうです。全道いたるところの路傍や水路脇、放棄農地などに生えていますが、タネで増えるものではないので、塊茎が人為的に運ばれた結果であると考えられます。食料の乏しい時代には、キクイモも立派な食料とされていたので、開拓農家などがあちこちに持ち込んだものでしょうか。
ただキクイモの貯蔵養分は、他のイモのようなデンプンではなく、イヌリンが主成分です。イヌリンはデンプンのようには分解できないので、健康食品として人気が高く、検索をかけると膨大な関連ページが出てきます。

キクイモに極めて近縁の植物に、イヌキクイモ(H. strumosus)があります。(ストゥルモーサスとは、腫れたような膨らみのあるという意味だそうで、塊茎の形から来ています) キクイモによく似た植物にキクイモモドキ(Heliopsis)がありますが、これは別属の植物です。
道内では道南地方と根釧地域に野生化が見られ、札幌近辺でも数カ所確認されています。この二種は極めて近縁で区別ができなく、昔からあれこれ論議になっている植物ですが、道内では開花期が明らかに約一ヶ月早く、9月中旬に道南を走ると、あちこちの路傍で花を見ることができます。
イヌキクイモ拡大
(キクイモの花弁の先がやや丸いのに対し、イヌキクイモのそれはやや尖るとの記載の通りです。 厚沢部町内で 2008.10.15)

今までで一番近くは、小樽の塩谷の海岸でイヌキクイモを見たことがあります。
帰化植物について、時々お世話になる山口さんのレポートにある通り、イヌキクイモの塊茎はやや深いところにあり、小さなもののようです。食用として利用されることもなければ、なかなか広がりにくいのかもしれません。

道内では、夏以降に道端に咲いている植物が、オオハンゴンソウからオオアワダチソウにリレーされ、最後はキクイモが締めるという、北アメリカ原産の帰化植物のオンパレードになっています。それもまた北海道らしいと言えばそうなんでしょうね。

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